常陸秋そばと産地のはなし

「常陸秋そば」と言っても、ひとつの味ではありません。同じ品種でも、育った土地と刈り取りの時期で、実の性格が変わります。

茨城製粉が扱う3銘柄は、いずれも常陸秋そばです。それでも打ったときの手ごたえも香りも違います。このページでは、その違いがどこから来るのかをご説明します。

常陸秋そばとは

常陸秋そばは、昭和53年に金砂郷町(現在の常陸太田市)で品種登録された、茨城県の在来種です。金砂郷の在来種のなかから、実の大きさと質のそろったものを選び抜いて育てられました。

特徴は大きく2つあります。

  • 実が大きく、粒がそろっている実の大きさと品質の高さから「玄そばの最高峰」と呼ばれてきました。粒がそろっていることは、脱皮の工程でそのまま効いてきます。
  • 香りと甘みが立つ挽きたての粉は、ふくよかな香ばしさとともに、ほのかな甘みが広がります。打っても切れにくく、のど越しが出る品種です。

そば職人から「扱いやすく、風味豊か」と評価されてきた品種で、全国のそば店から支持されています。

県北と県西

常陸秋そばは、いまは茨城県の各地で作られています。茨城製粉が扱っているのは県北と県西のものです。

県北(けんぽく)

常陸太田をはじめとする県の北部です。常陸秋そばの生まれた土地でもあります。

山あいで昼と夜の寒暖差が大きく、この温度差が実を締めます。締まった実は香りが乗りやすくなります。茨城製粉の綱條と頼房は、この県北のものです。

県西(けんせい)

県の西部、平地の広がる地域です。

こちらで育つ実は大きめに育ちます。粒が大きいということは、殻に対して中身の割合が変わるということです。挽いたときに取れる粉の質が変わり、香りの厚みとして出ます。茨城製粉の光圀が、この県西のものです。

茨城製粉が扱う常陸秋そばのなかで光圀を最上位としているのは、この粒の大きさと、そこから出る香りの強さによるものです。

早刈りと遅刈り

産地と並んで、実の性格を決めるのがいつ刈るかです。

早刈り遅刈り
実の色青みが残る落ち着いた色
水分多い少ない
香り若く、立ち上がりが速い熟成した、後から追ってくる
打ち手ごたえ日によって振れやすい穏やかで安定する
向く店香りを前に出したい店毎日同じものを出したい店

早く刈れば、実はまだ充実しきっていません。水分が多く、青さが残ります。そのぶん香りが若く、はっきり立ちます。代わりに水回しの手ごたえが日によって変わりやすくなります。

遅く刈れば、実は充実します。収穫の時点ですでに少し熟成が進んだ状態になります。香りは穏やかに、扱いは素直になります。

どちらが優れているという話ではありません。店の構えに、どちらが合うかです。

3銘柄はどう分かれているか

銘柄産地刈り取り実香り打ちやすさ
綱條県北遅刈り充実した実熟成された香り打ちやすい
頼房県北早刈り小ぶり・青い若い香り平均的
光圀県西早刈り大きめ・青い芳醇で強い香り上級者向け

並べてみると、性格の分かれ方がはっきりします。

  • 綱條だけが遅刈りです。だから扱いが素直で、香りが穏やかです。
  • 頼房と光圀はどちらも早刈りですが、産地と粒の大きさが違います。県北の小ぶりな頼房は軽い香りに、県西の大きな光圀は厚みのある香りになります。

「同じ青い実でも、行き先が違う」というのが、この2つの関係です。

新そばの時期の扱い

常陸秋そばは秋に穫れる品種です。その年に穫れたばかりのものを新そばと呼びます。

新そばは香りが立ち、色も鮮やかです。ただし水分が多いという性質があります。前年産と同じ手順で打つと、手ごたえが変わって戸惑うことがあります。

切り替えの時期は、加水を控えめに始めてください。いつもの量を一度に入れず、様子を見ながら足していくと収まります。とくに早刈りの頼房・光圀では、この差が出やすくなります。

年産をまたいで使い分けたい場合や、切り替えの時期をずらしたい場合はお申し付けください。ご注文の画面では、いまの年産を初期値でご用意しています。

銘柄の選び方

決め方は、店の構えから逆算するのが早道です。

  • そばを主役にしたいつゆを控えめにして香りで食べさせる構えなら光圀。ただし打ち手が決まっていることが条件です。
  • 盛りで軽く食べさせたい細打ちにして、のど越しで見せる構えなら頼房。
  • 毎日同じものを安定して出したい打ち手が交代する店、数を打つ店なら綱條。
  • まず常陸秋そばを知りたい綱條から。いちばん癖がなく、産地の性格をつかむ入口になります。

文章でお読みいただくより、打っていただくのが確実です。1銘柄500gのサンプルを、初回は送料無料でお送りしています。3銘柄を同時にお送りすることもできますので、店の水と打ち方に合うものをお選びください。

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